会津若松を中心とした会津全域の代表的な郷土料理。
「郷土料理百選」の1つ。
元々は、武家料理だったものが、広まったもの。
里イモ、ニンジン、木くらげなどを細かく切って、干し貝柱でダシをとり、しょう油と塩で味を調えた汁物。
それに、磐梯竹の子、わらび、キノコなど、季節ものも加わるが、具材の数は、奇数が原則。
「山の幸」と「海の幸」を、上手にとり合わせた上品な薄味で、透明感のある煮汁である。
四季を問わず、いろいろな行事、特にハレの席には、必ず出される。
平たい朱塗りお椀に入れて出され、何杯おかわりしても失礼にならない。
貝柱と豆麩が入り、塩で味付けを補っているので、しょう油味なのに透明であることが、他の汁物と異なっているところだ。
令和3(2021)年度の文化庁/100年フードに認定。
[閑話]
【 材 料 】
基本は変わらないが、各家ごとに多少のバリエーションがあり、代々伝えられている。
仏事には、ニンジン、赤蒲鉾を省く。
5人前 | 下ごしらえ | 他家の例 (4人前) | ||||
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干し貝柱(ホタテ) | 8個 | 水に一晩つけて、手でほぐす | 6個 | 4個 | 5個 | |
木くらげ | 8枚 | 温水で30分戻し、ゴミや固い部分を除き、細かく切る | 6枚 | 8枚 | 少々 | |
里イモ | 8個 | 半月切りし、塩ゆでして、ぬめりを取る | 5個 | 6個 | 5個 | |
糸こんにゃく | 1袋 | 3cm幅に切り、湯通し | 1/2袋 | 1袋 | ||
ゴボウ | 中1本 | イチョウ切りし、薄い酢水につけアクを取り、塩ゆで | 中2本 | 20cm | ||
ニンジン | 中1本 | イチョウ切りし、下ゆで | 中2本 | 中2本 | 中1/2 | |
干しシイタケ | 5枚 | 洗って水で戻し、千切り | 4枚 | 4枚 | ||
大根 | 1/4本 | イチョウ切りし、下ゆで | 10cm | |||
赤蒲鉾 | 2切 | 細切り | ||||
銀杏 | 適量 | 炒って、熱いうちに皮をむく | 適量 | 適量 | ||
豆麩 | 適量 | 適量 | 適量 | |||
だし汁 | 3カップ | 3カッフ | 3カップ | 適量 | ||
貝戻し汁 | 2カップ | 1カップ | 適量 | 適量 | ||
椎茸戻し汁 | 1/2カップ | 少々 | ||||
酒 | 1/2カップ | 少々 | 少々 | |||
砂糖 | 大1 | 大2 | 適量 | 少々 | ||
しょう油 | 少な目 | 薄めの香りづけ | 少々 | 適量 | 少々 | |
塩 | 適量 | 味を調整する | 少々 | 少々 | ||
みりん | 適量 | 大1 | ||||
卵白 | 適量 | |||||
柚子 | 適量 |
【 調 理 】
(1) だし汁を入れた鍋に、下ごしらえした材料と、戻し汁を入れ煮る。
(2) ひと煮立てしたら、酒、砂糖、しょう油、塩、みりんで味付けをする。
(3) ポイントは、しょう油を少なめにして透明感を保ち、味は塩で調えること。
(4) 汁椀に盛り、下ゆでした季節の青物を、色付けとして少々のせる。
水で戻した身欠ニシンを、山椒の葉とともに漬け込んだもの。
会津を代表する料理の一つで、香り、味ともに、絶品である。
「郷土料理百選」の1つ。
山椒の防腐作用を利用した保存食であるが、まことに美味。
ご飯のおかずだけでなく、酒のツマミにもってこいである。
地元のスーパーには、真空パックされた出来合いが販売されている。
北前船で運ばれる身欠きニシンは 長持ちする海産物の中でも、脂分が多い。
江戸時代、雪に閉ざされる冬期を乗り切るための、重要なタンパク源であった。
地元の本郷焼では、専用の四角い「ニシン鉢」が造られている。
濃茶と黒色の美しい陶器で、昔は嫁入り道具の一つでもあった。
山椒漬への、想いがうかがえる。
[閑話]
【 材 料 (4人前)】
◇ 身欠きニシン | 12本 |
◇ 山椒の葉 | 30枚 |
◇ しょう油 | 200cc |
◇ 酒 | 100cc |
◇ 酢 | 80cc |
◇ 砂糖 | 大さじ 2 |
◇ みりん | 大さじ 3 |
【 調 理 】
(1) 身欠ニシンを、米のとぎ汁に浸けて、アクをぬく。
(2) 山椒の葉を水で洗い、水気を切る。
(3) 水200ccに、しょう油、酒、酢、みりん、砂糖で、漬け汁を作る。
(4) アク抜きしたニシンを、山椒の葉で交互に重ね、漬け汁に浸る様にして、漬け込む。
(5) 重石をして、2〜3週間ほどで、完成。
(6) 適当な大きさに切って、盛り付ける。
魚の臭みと渋みが抜け"生"でも美味しいが、焼いても良し、あぶっても良し。
オカズにも良いが、酒のツマミにも、なお良し。
「棒たら」とは、真鱈を干して、棒のように硬くなったものを指す。
じっくり気長に煮るので、骨まで軟らかくなり、口の中で崩れるほどの甘露煮が出来上がる。
元のタラよりも、数段うまくなった逸品であり、珍味だ。
正月やお祭り、祝いの席に用意される、めでたい料理である。
地元のスーパーには、ニシンの山椒漬と共に、真空パックされた完成品が売られている。
海の幸にあこがれ、いかに上手く食べるようにするかの知恵が凝縮している。
「助棒たら(スケソウダラ)」が主流になったが、特別な時には「本棒たら(マダラ)」が使われる。
山に囲まれた土地での保存食で、身欠ニシンと同様、重要なタンパク源であった。
昔は、棒たらと言えば「一ノ堰」と、皆が口をそろえるほど有名だった。
【 材 料 (4人前)】
◇ 棒たら | 12切 |
◇ 砂糖 | 大さじ 5 |
◇ しょう油 | 大さじ 5 |
◇ 酒 | 大さじ 5 |
◇ みりん | 大さじ 3 |
◇ 昆布と鰹のダシ汁 | 適量 |
【 調 理 】
(1) 棒たらを、たっぷりの水に浸ける。
3日ほど毎日、新しい水を取り替える。
(2) 戻ったら水洗いをして、1口大に切る。
特に、腹部の黒い薄皮を取り除く。
(3) 鍋にたっぷりの水を入れ、5分ほど煮立てる。
(4) 冷めたら新しい水と入れ替えて、半日ほど置く。
(5) たっぷりのダシ汁と入れ替え、落としぶたをして、弱火で3時間程じっくり煮る。
汁が、半分になるころが目安。
(5) 冷めたら、調味料を入れ、30分ほど煮る。
(6) 冷ましては煮るを、3〜4回繰り返し、とろ火で味を含ませる。
2、3日ほどかけ、骨が柔らかくなるのが目安。
スルメイカと人参を千切りにして、しょう油などで漬け込んだもの。 冬の訪れとともに作られる。
お正月には欠かせない逸品だが、客へのおもてなし料理ではない。
熱いご飯との相性は抜群で、酒のツマミにも最高。
種を取った赤唐辛子を、小口切りして入れる家も多い。
ゴマとあえても、美味しい。
生ニンジンのβカロチンやビタミンなどが豊富で、抗酸化作用による成人病の予防、女性の美容によく効く。
松前漬の元祖でもある。
松前漬と異なるのは、昆布が入っていないため、ぬめりがなく、シャキシャキしている。
最近では、昆布や数の子を入れる家庭も多くなった。
会津のみならず、県の北側地域でも広く食されている。
令和3(2021)年度の文化庁/100年フードに認定。
【 材 料 (4人前)】
◇ にんじん | 200g |
◇ するめ | 1枚 |
◇ 赤唐辛子 | 1/2本 |
◇ しょう油 | 1/2カップ |
◇ 酒 | 1/2カップ |
◇ 昆布のダシ汁 | 1/2カップ |
◇ みりん | 1/4カップ |
【 調 理 】
(1) スルメの薄皮をむいて、ハサミを用いて長さ約4センチ・幅2ミリほどの細切りにする。
マッチ棒大と思えば良い。
(2) 人参の皮をむき、スルメと同じくマッチ棒大に、千切りにする。
幅をする目よりやや広めの3ミリほどにすると、よりシャキシャキ感が出る。
(3) トウガラシは種を取り除き、細かく輪切りにする
。
(4) 酒と昆布のダシ汁とみりんを混ぜ、アルコールを飛ばした後に、しょう油を入れ冷ます。
酒、ダシ汁、しょう油は1:1:1の割合が目安で、みりんはお好みの量を入れる。
しょう油の代わりに、めんつゆをを使っても美味しい。
(5) この冷えたタレに浸し、半日か1日を漬けて、イカが少し柔らかくなれば出来上がり。
(6) あとは、毎日、かき混ぜること。
素揚げではなく、天ぷらにした3点が名物。
特に、ニシンとスルメの天ぷらは、全国的にも珍しい食べ方である。
冠婚葬祭や、来客のもてなしの時には、良く出される。
甘いまんじゅうも、しょう油を付けて食べる。
滝沢峠の強清水にある茶屋では、主な名物になっている。
旧東山街道沿いの田楽の“お秀茶屋”、旧日光街道沿いの棒たらの“一ノ堰茶屋”と共に、名物三大茶屋と称されている。
[閑話]
≪ニシンの天ぷら≫
保存食である身欠ニシンを、1晩、水で戻す。
その間、数回、新しい水と交換する。
固い腹骨は、取り除く。
約7センチの長さに、斜め切りにする。
軟らかくなったところで、天ぷらにする。
元のニシンの味よりも、旨くなると言われている。
手打ちソパとの相性も、抜群である。
≪まんじゅうの天ぷら≫
元々は、仏前に供えて固くなったまんじゅうを、衛生上の安全のため揚げて食べたことから。
揚げると油の旨みが加わり、さらに美味しくなったことから、作り立ても揚げるようになった。
確かに、揚げると甘さが増す。
≪いか(スルメ)の天ぷら≫
スルメは、3昼夜、水に浸けて戻す。
毎日、新しい水と交換する。
冷水がうまさを閉じ込んで醸し出し、生より美味しくするという。
軟らかくなったところで、天ぷらにする。
えんぺら、胴、足に切り分け、食べやすい大きさに切り、表面に斜めの切り目を入れる。
多少、固めを好む人も多い。
塩3、麹5、米8の割合いで漬け込んだ漬物。
元々は会津の特産品であったが、全国的にも有名になり、東京でも漬け物として売っている。
ヌカを使わないため、麹の甘さとやさしい香りが、季節を問わず楽しめる。
毎日かき混ぜるような手間も必要ない。
最近は冷蔵庫で保管できるため、塩分の少ない塩1対、麹2対、米4ぐらいの割合で、漬けている家が多くなった。
きゅうり、人参、ナス、大根、かぶなどの野菜が中心であるが、鮭、ブリ、イカ (スルメ) などの魚介類や、肉などにも使われている。
イワシやサバなどの青魚は、臭みも抜けて、まことに美味しくなる。
味の薄い鶏肉も、うまくなる。
上記以外で、美味しかったもの。
・アスパラガス、カリフラワー、ウド、菜花、みょうがのしそ巻き、セロリ、ショウガ
・エリンギ、銀杏、アボカド、ソラマメ、獅子唐
・さわら、数の子、砂肝、牛肉、豚肉
・こんにゃく、モッツァレラチーズ
食べる時には軽く洗うが、洗い過ぎると風味も抜けてしまうので注意。
生野菜に、三五八床を付けて食べても美味しい。
[閑話]
【 調 理 】
≪漬け床の作り方≫
(1) 少なめの水で、良く洗った米を蒸すか炊く。
(2) 60℃位に冷めてから、麹を混ぜる。
(3) 10時間ほど、60℃を保つ。
(4) 塩を混ぜて、10日位、冷蔵庫で寝かせば完成。
容器に入れ、密閉して一晩置いてからでも使える。
甘めが好きな人は、麹を多くするとよい。
最近は、三五八漬けの素がスーパーなどで売っている。
≪本漬け≫
(1) 野菜などの具材は、あらかじめ材料の約4パーセントの薄塩で2日間漬けたものを、本漬けにする。
(2) 漬け床に1〜2日漬ければ、三五八漬けができる。
一晩ほど漬けただけでも、浅漬けとして美味しい。
(3) 塩を足していくことで、床は繰り返し使える。
(4) そのままにしておくと“漬り過ぎ”になるので、床から出してラップをし冷蔵庫で保管する。
1〜2日で食べる量を、漬け込むのがコツ。
親指より小さめなナスで、収穫時期が短い。
7月中旬から8月中旬までが収穫時期。
皮があることを感じさせないほど、柔らかさがある。
会津の夏には欠かせない漬物の具。
大阪/泉州特産品で全国に広まった「水なす」とはイメージが異なる。
ご飯が何杯でも進む美味しさがある。
季節限定ではあるが、漬物の中で断トツに美味いとお勧めの漬物である。
【 材 料 (水ナス20〜30個)】
◇ 水ナス | 500g |
◇ 水 | 500cc |
◇ 砂糖 | 大さじ3 |
◇ 塩 | 大さじ3 |
◇ みょうばん | 大さじ1 |
【 調 理 】
(1) 砂糖、塩、みょうばんを水に入れ、ひと煮立ちさせる。
(2) 水ナスをへたのついたまま、さっと水洗いする。
(3) 冷ました漬け汁に、へたのついたままの水ナスを入れる。
(4) 重しをのせ、一昼夜漬けこんだら出来上がり。