偉     人     伝

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猪   俣   公   章

 幼きころ作曲の才能に目覚め、その後も夢は消えることなく増すばかり、古賀政男に師事し作曲家を目指す。
 森進一へデビュー曲「女のためいき」や、「港町ブルース」「おふくろさん」「冬の旅」などの大ヒット曲を次々と提供する。
 すでに著名な歌手たちにも、五木ひろしに「千曲川」、内山田洋:クール・ファイブに「噂の女」などの名曲を提供している。
 事実上の芸能界追放となり、借金返済や病気に苦しめられていた水原弘に「君こそわが命」を提供し、奇跡のカムバックをさせた。
 自ら発掘した坂本冬美、マルシアを、自宅に住まわせて育て上げた。
 歌手だけでなく、里村龍一や冬樹かずみなど作詞・作曲家の育成にも尽力した。
 晩年は、酒が大好きで寂しがりやだったためか、毎晩が宴会だったという。
 従来の演歌の領域を超越し、新風を巻き起こしたメロディは2千曲を超え、その後の演歌界に刺激的な影響を与えた。

<ジャケット写真は非公開>    

昭和13(1938)年

猪俣公章の生誕の地

 4月11日
 会津坂下町にて生まれる
 猪俣 公章 (いのまた こうしょう)。
 本名は同じ字で( ― きみあき)。


昭和24(1949)年

 小学校5年生になると作曲に目覚め、没頭していく。

昭和29(1954)年

 開成高校に入学する。

昭和32(1957)年

 日本大学芸術学部音楽科へ進学する。
 在学中からバンドマンに熱中していたという。
 卒業後、作曲家を目指し、古賀政男に師事する。

昭和39(1964)年

 「僕の手でよかったら」で作曲家としてデビューする。

昭和41(1966)年

 ビクター専属となり、本格的な作曲活動を開始する。
 森進一のデビュー曲 (シングル) にして大ヒットとなった「女のためいき」を作曲し、作曲家として全国的に知られるようになる。
 その後も森進一へ、「港町ブルース」「おふくろさん」などの名曲を提供し続ける。

6月  女のためいき/恋に泣きたい 歌手/森進一
  《カバー》歌手/天童よしみ  [昭和演歌名曲選 第十二集 .]
     歌手/こおり健太  [デビュー10周年記念アルバム .]
     歌手/前川清    [My Favorite Songs〜Japanese〜IV .]
     歌手/山内惠介   [アルバム Root .] など
10月  東京みれん/女のなみだ雨 歌手/森進一

昭和42(1967)年

《君こそわが命》
 水原弘のマネージャー/神林じゅん (本名:神林義忠、後に演歌界のドンと称される) は、再起させたいと猪俣に作曲を懇願する。
 当時、水原弘は借金や病気なども抱え酒に溺れて、凋落の一途をたどっていた。
 熱意にほだされ、渾身の力を振り絞って作曲した「君こそわが命」は大ヒットする。
 同年末には日本レコード大賞・歌唱賞を受賞し、8年ぶりにNHK紅白歌合戦へ復帰出場するなど、みごとに水原弘を再起させた。
 当時、水原弘の復活は“奇跡のカムバック”とまで称賛され、猪俣自身も本格派作曲家として不動の地位を得る。
  <カバー>  歌手/藤圭子   [演歌全集8枚組(憂愁/恋心) .]
       歌手/高杉俊介  [君こそわが命 / 好きさヨコハマ .]
           ※ 第17回 横浜音楽祭/新人賞を受賞。
       歌手/天童よしみ [天童節 昭和演歌名曲選 第十二集 .]
       歌手/杉良太郎  [杉良太郎の君こそわが命/恋石火 .]
       歌手/北山たけし [セカンド・アルバム 夢 .]
       歌手/石原裕次郎 [愛唱歌・ベスト40 .]
       歌手/美空ひばり [歌謡曲50年(第13集) .]
       歌手/氷川きよし [演歌名曲コレクション19 .]

1月  女の波止場/女ですもの 歌手/森進一
2月  君こそわが命/沈黙のブルース 歌手/水原弘
2月  君こそわが命/<女だからと言って> 歌手/佳川ヨコ
3月  俺を泣かせる夜の雨 歌手/一条英一(五木ひろし)
4月  女の酒場/他国の女 歌手/森進一
5月  涙の艶歌船/東京は泣いている 歌手/池和子 (日吉ミミ)
7月  女の岬/女のギター 歌手/森進一
9月  命かれても/母恋い人生 歌手/森進一

 ≪受賞≫ 水原弘/君こそわが命 (第9回日本レコード大賞/歌唱賞)
 ≪紅白≫ 水原弘/君こそわが命 (第18回NHK紅白歌合戦)

昭和43(1968)年

2月  湯の町の女/涙をふいて 歌手/森進一
3月  涙の細い道/うら町銀座 歌手/池和子 (日吉ミミ)
7月  ひとり酒場で/神戸の夜 歌手/森進一
10月  酒場人形/恋のおわり 歌手/青江三奈
11月  女の別れ/花は泣かない 歌手/池和子 (日吉ミミ)

昭和44(1969)年

 函館市から鹿児島県枕崎市までの港町が登場する「港町ブルース」が発売され、2週間ほどでオリコンチャートのベストテンに初登場すると5週間にわたり第1位となる。
 売上枚数は250万枚にも達し、森進一のシングル盤で最高の売上を記録した。
 平成12(2000)年、気仙沼市内の港ふれあい公園に歌碑が建立された。
 すでに猪俣公章は亡くなっており、除幕式には森新一が参加している。

4月  港町ブルース/女の四季 歌手/森進一
  《カバー》歌手/西田佐知子    [エッセンシャル・ベスト .]
     歌手/ザ・ピーナッツ  [わたしの城下町 .]
     歌手/天童よしみ    [天童節 昭和演歌名曲選 第十五集 .]
     歌手/藤圭子      [わたしの城下町 .]
     歌手/三橋美智也    [哀愁演歌]  など
7月  <おんな>/女のワルツ 歌手/森進一
9月  会津の女/<桧原湖哀歌> 歌手/春日八郎
10月  女の爪あと/流れ花 歌手/水原弘
   《カバー》歌手/藤田まこと  歌手/矢吹健
11月  気にかかる/これが愛なのね 歌手/園まり
12月  鳴門海峡/<大阿蘇慕情> 歌手/三橋美智也

 ≪受賞≫ 森進一/港町ブルース (第11回日本レコード大賞/最優秀歌唱賞)
      森進一/港町ブルース (第2回日本有線大賞)
 ≪紅白≫ 森進一/港町ブルース (第20回NHK紅白歌合戦の白組トリ)

昭和45(1970)年

 新人の藤圭子に「女のブルース」を提供、圭子2枚目シングルであったが初のオリコン1位となり8週連続1位を維持し、ミリオンセラー (公称110万枚) を達成した。
 内山田洋とクール・ファイブの「噂の女」も50万枚を超えるヒットとなり、森進一の「望郷」もオリコンチャート1位となるなど、次々に名曲を世に出す。

1月  この世を花にするために/この道 歌手/橋幸夫
1月  花と炎/<人生一路> 歌手/美空ひばり
1月  大阪の夜/なにわ川 歌手/美川憲一
2月  恋ひとすじ/夜のこぼれ花 歌手/森進一
2月  女のブルース/<あなた任せのブルース> 歌手/藤圭子
3月  <くちづけ>/吹きだまり 歌手/園まり
3月  花の特攻隊/あゝ戦友よ 歌手/杉良太郎
6月  一度だけなら/<涙をかついで行こうよ> 歌手/野村真樹
7月  噂の女/<だまって行かないで>   歌手/内山田洋とクール・ファイブ
9月  <恋は消えても愛は残る>/君は今でも 歌手/鶴岡雅義と東京ロマンチカ
10月  未練/恋怨歌 歌手/園まり
10月  信じてほしい/女なんかに 歌手/野村真樹
12月  望郷/悲哀のワルツ 歌手/森進一

 ≪受賞≫ 第3回日本有線大賞  内山田洋とクール・ファイブ/噂の女

昭和46(1971)年

 「おふくろさん」は、アルバムの一曲をシングル盤にカットして大ヒットとなる。
 富士写真フイルムの「写ルンです」のCMにも使用される。
 森進一が2度目の日本レコード大賞最優秀歌唱賞を受賞し、NHK紅白歌合戦で3年連続のトリを務めた。
 平成11年(1999)年、森進一の母の故郷である甑島 (下甑島の最南端/手打地区) に歌碑が建立された。

2月  <許してあなた>/古い時計 歌手/矢吹健
2月  歌舞伎町の女/最后の夜 歌手/野村真樹
4月  女のくやしさ/<夢を捨てた女>   歌手/内山田洋とクール・ファイブ
5月  おふくろさん/<小鳥と少年> 歌手/森進一
  《カバー》歌手/天童よしみ  [天童節 昭和演歌名曲選 第十三集 .]
     歌手/美空ひばり  [ダブル・ベスト☆オリジナル .]
     歌手/シャ乱Q   [シャ乱Qの演歌の花道 .] など
10月  港町/別れの棧橋 歌手/都はるみ
12月  <流れのブルース>/悲恋 歌手/森進一
12月  渡り鳥いつ帰る/肩に二月の雪が舞う 歌手/北島三郎

 ≪受賞≫ 森進一/おふくろさん (第13回日本レコード大賞/最優秀歌唱賞)
 ≪紅白≫ 森進一/おふくろさん (第22回NHK紅白歌合戦の大トリ)

昭和47(1972)年

 藤圭子のヒット曲「京都から博多まで」の続編盤として、2年後に「私は京都へ帰ります」がリリースされている。

1月  京都から博多まで/街の子 歌手/藤圭子
  《カバー》歌手/渚ゆう子    [京都フェロモン菩薩 .]
     歌手/坂本冬美    [好きです日本 .]
     歌手/因幡晃     [歌鬼2 .]
     歌手/あさみちゆき  [あさみのうたV .]
     歌手/八代亜紀    [カバーベスト 4 .]
3月  歳月/命あればこそ 歌手/鶴岡雅義と東京ロマンチカ
4月  波止場町/夏子ひとり 歌手/森進一
5月  別れの旅/<哀別> 歌手/藤圭子
7月  長崎の恋は悲しい/港で逢いたい 歌手/都はるみ
10月  おんなの海峡/さよなら電話 歌手/都はるみ
10月  放浪船(さすらいぶね)/<求愛> 歌手/森進一
10月  熱血猿飛佐助/いざゆけ猿飛佐助 歌手/桜木健一
11月  <秘密>/二人のギター 歌手/鶴岡雅義と東京ロマンチカ

 ≪紅白≫ 放浪船/森進一
      藤圭子/京都から博多まで
      都はるみ/おんなの海峡 (第23回NHK紅白歌合戦)

昭和48(1973)年

1月  旅路にひとり/<過去にすがって> 歌手/青江三奈
2月  男泣き/<波止場の女>   歌手/内山田洋とクール・ファイブ
3月  かくれんぼ/津軽の里 歌手/石川さゆり
5月  若狭の宿/雨の停車場 歌手/牧村三枝子
6月  くちべに怨歌/郷愁 歌手/森進一
8月  青い月夜の散歩道/あなたと私の村祭り 歌手/石川さゆり
8月  大恋愛/男にゃ三つの夢がある 歌手/水前寺清子
10月  冬の旅/見知らぬ女 歌手/森進一
11月  恋の雪割草/<御用牙> 歌手/藤圭子
12月  心がわり/<涙も枯れながら>   歌手/内山田洋とクール・ファイブ

 ≪紅白≫ 森進一/冬の旅 (第24回NHK紅白歌合戦)
      水原弘/君こそわが命

昭和49(1974)年

 「今夜かしら明日かしら」で日本デビューをしたが不発に終わっていたテレサ・テンに「空港」を提供し大ヒットとなり、日本でもトップ歌手の仲間入りを果たす。
 2年前にヒットした「京都から博多まで 」の続編である「私は京都へ帰ります」は、作詞の担当を山口洋子に変更されている。

4月  さらば友よ/妹よ 歌手/森進一
7月  空港/はぐれた小鳩 歌手/テレサ・テン
  《カバー》歌手/中森明菜   [艶華 -Enka- (初回盤B).]
      歌手/由紀さおり  [由紀さおり テレサ・テンを歌う.]
      歌手/岩佐美咲   [佐渡の鬼太鼓 (通常盤).]
7月  私は京都へ帰ります/<雨の仙台> 歌手/藤圭子
8月  マリアの鐘/海辺のホテル 歌手/欧陽菲菲
9月  北航路/<流浪の詩> 歌手/森進一
10月  雪化粧/遠くから愛をこめて 歌手/テレサ・テン
11月  路傍の花/淡路島エレジー 歌手/大川栄策
12月  南十字星/北国 歌手/欧陽菲菲

 ≪受賞≫ テレサ・テン/空港 (第16日本レコード大賞/新人賞)

昭和50(1975)年

 当初「千曲川」は、新人/川中美幸の歌として星野哲郎の歌詞に作曲したが、曲を聴いた作詞家/山口洋子の熱望により、五木ひろしへ提供された。
 「千曲川」は大ヒットし、五木ひろしの念願であった紅白歌合戦のトリとなった。

1月  さらばハイセイコー/[レース実況] 歌手/増沢末夫
1月  あなたの噂/<銀座のお恵ちゃん> 歌手/藤圭子
4月  ハイセイコーよ元気かい/[実況録音] 歌手/増沢末夫
4月  北ホテル/<海峡>     歌手/内山田洋とクール・ファイブ
5月  千曲川/愛のいのち 歌手/五木ひろし
  《カバー》歌手/羽山みずき [日本の心情を歌う .]
      歌手/八代亜紀  [ベスト・コレクション 1971〜1981 .]
      歌手/新沼謙治  [ダブル・ベスト☆オリジナル&カバーズ .]
      歌手/坂本冬美  [ENKA 〜情歌〜 .] など
8月  面影の女/やもめのジョナサン 歌手/チャダ
9月  ふたりの旅路/約束 歌手/五木ひろし
10月  大浮草/裏町 歌手/水前寺清子
12月  <二人の御堂筋>/再会   歌手/内山田洋とクール・ファイブ

 ≪受賞≫ 五木ひろし/千曲川 (第17日本レコード大賞/最優秀歌唱賞)
 ≪紅白≫ 五木ひろし/千曲川 (第26回NHK紅白歌合戦、初のトリ)

昭和51(1976)年

 「森進一の新曲歌詞募集」に応募し優勝した才能を見抜き、中学校を出て漁師をしていた里村龍一をスカウトし弟子入りさせている。
 歌手だけでなく、作詞家や作曲家も育てている。

2月  愛の始発/恋は淡雪 歌手/五木ひろし
2月  大阪ラプソディー/天満エレジー 歌手/海原千里・万里
3月  <十九の夢>/さよならはくちづけで 歌手/西川峰子
7月  旅/風渡る 歌手/五木ひろし
7月  峰子のマドロスさん<東京へ行っちゃった> 歌手/西川峰子
8月  さざんか/いのち燃やして 歌手/森進一
9月  黄昏のパラダイス/夢ごこち 歌手/海原千里・万里
10月  北の旅愁/あなた次第 歌手/細川たかし

 ≪紅白≫ 西川峰子/峰子のマドロスさん
      森進一/さざんか
      五木ひろし/愛の始発 (第27回NHK紅白歌合戦、2年連続のトリ)

昭和52(1977)年

<.tr>
1月  <雨の桟橋>/夜が行く 歌手/森進一
2月  あなたと生きる/<海辺のホテル> 歌手/テレサ・テン
2月  ギター流して今晩/<それまで待ってね> 歌手/西川峰子
2月  <道頓堀行進曲>/野菊の駅 歌手/海原千里・万里
10月  焼けた道/けもの道 歌手/やしきたかじん
    ※ テレビ東京「新・木枯らし紋次郎」の主題歌

昭和53(1978)年

3月  愛の扉/(流れの女) 内山田洋とクール・ファイブ
9月  雪よおまえは/しあわせ挽歌 歌手/森進一

昭和54(1979)年

1月  ゆきずり/<表参道日暮れ前> 歌手/青江三奈
4月  <四畳半>/赤と黒のエレジー 歌手/大川栄策
6月  <命燃やして>/哀愁本線 歌手/石川さゆり
6月  銀のライター/<波> 歌手/森昌子

昭和55(1980)年

2月  <あなたに帰りたい>/ぬかるみの女 歌手/石川さゆり
5月  涙きらり/ひとりぐらし 歌手/森進一
6月  ほたる音頭/しあわせ螢がとんでいく 歌手/糸川螢子 (野中小百合)
8月  女の爪あと/<負けおしみ> 歌手/矢吹健
12月  夕焼け父さん/ツンツン小唄 歌手/糸川螢子 (野中小百合)

昭和56(1981)年

 第2回/古賀政男記念音楽大賞で、「命あたえて (森進一)」が大賞受賞。

4月  さすらい情話/<風を越える日> 歌手/水前寺清子
8月  <有明けの海>/男の街角 歌手/水前寺清子
9月  命あたえて/愛と憎しみと 歌手/森進一
11月  それは恋/夢人形 歌手/森進一
   ※ 舞台作品「近松心中物語」の主題歌

 ≪紅白≫ 森進一/命あたえて (第32回NHK紅白歌合戦)

昭和57(1982)年

7月  <漁火挽歌>/待ちましょう 歌手/石川さゆり
9月  <大阪情話>/昭和自叙伝 歌手/三門忠司

昭和58(1983)年

9月  猫/男の耳はロバの耳 歌手/池和子 (日吉ミミ)
11月  東京かくれんぼ/(カラオケ) 歌手/石川さゆり
11月  東京たずね人/(カラオケ) 歌手/琴風豪規
11月  <港町演歌>/なつかしの港町 歌手/中山ますみ

昭和59(1984)年

1月  ふたりの港町/あなたの女と呼ばれたい 歌手/柳沢純子

昭和60(1985)年

2月  みなと恋唄/横浜港 歌手/羅勲児
5月  <今夜だけは>/うわさ街 歌手/野村真樹
8月  <Kiss Me よこはま>/酔って大阪 歌手/日野美歌
9月  女もよう/<榾火> 歌手/森進一
12月  道標/男ざかり 歌手/杉良太郎

 ≪紅白≫ 森進一/女もよう (第36回NHK紅白歌合戦)

昭和61(1986)年

 前年のTBS歌謡選手権ブラジル大会で準優勝し、東京「ワールドチャンピオン大会」に出場するために来日していた日系3世のマルシアと、審査員として出会う
 マルシアの才能を見抜き、帰国を1ヶ月ほど延ばして、レッスンを授ける。
 また、NHK勝ち抜き歌謡天国の歌唱指導をしていた時、和歌山大会で優勝した坂本冬美と出会い、歌手を目指すため上京を勧め、自宅で内弟子として指導し始めた。

4月  愛愁路/心化粧 歌手/前川清
7月  <ゆうすげの恋>/湯の町別れうた 歌手/森進一
11月  <夢流れ>/ブルースに泣く女 歌手/浦上幹子 (宇多川都)

昭和62(1987)年

 自宅において弟子修業させていた坂本冬美を、満を持して「あばれ太鼓」でデビューさせる。  猪俣公章の狙い通り、いきなり、坂本冬美が思いもよらぬ80万枚を超える大ヒットとなる。

3月  あばれ太鼓/あじさい酒場 歌手/坂本冬美
11月  あばれ太鼓〜無法一代入り/沈丁花の女 歌手/坂本冬美

昭和63(1988)年

 デビューして2年目の坂本冬美は、前年の「あばれ太鼓」に続き「祝い酒」も大ヒットし、紅白歌合戦に初出場が決まった。
 逸話として、出場報告で猪俣宅を訪れると、
  「本番で泣くな、歌手が泣いたら歌手でなくなる」
と厳命された。
 本番では、なんとか泣かずに済ませたが、楽屋に戻る途中、感極まって号泣した。
 自宅で酒を飲みつつテレビから目を離さず見ていた猪俣は、
  「ヨシ、ヨシ」
と何度も つぶやきながら、涙を流していたという。
 日頃、弟子は皆な可愛いといっていたが、小間使いのようにコキ使っていた冬美への想い入れは格別だったようである。

4月  祝い酒/帰りの連絡船 歌手/坂本冬美
11月  少女さすらい/泣きたくて 歌手/浦上裕里子 (宇多川都)

 ≪紅白≫ 坂本冬美/祝い酒 (第39回NHK紅白歌合戦) 初出場

平成元(1989)年

 マルシアが「ふりむけばヨコハマ」でデビューする。
 猪俣が見抜いたとおり、15万枚を超えるヒットとなり、新人賞の各賞を総ナメする。

1月  ふりむけばヨコハマ/やがて離愁 歌手/マルシア
3月  男の情話/艶花恋 歌手/坂本冬美
4月  面影の郷/<渚の女> 歌手/五木ひろし
6月  男の情話〜セリフ入り〜/風花の駅 歌手/坂本冬美
8月  うさぎ/<雨> 歌手/森進一
9月  <おんな>/木曽の恋唄 歌手/藤あや子

 ≪受賞≫ マルシア/ふりむけばヨコハマ 第31回日本レコード大賞/最優秀新人賞
      第9回日本作曲大賞
 ≪紅白≫ 坂本冬美/男の情話 (第40回NHK紅白歌合戦)

平成2(1990)年

1月  雨あがり/冬の蝶 歌手/坂本冬美
   ※ テレビ東京「付き馬おえん事件帳」の主題歌
    「冬の蝶」は、作詞/石原信一
2月  抱きしめて/夢色しのび逢い 歌手/マルシア
5月  能登はいらんかいね/浜っ娘一代 歌手/坂本冬美
   ※ 「浜っ娘一代」は、作詞/石原信一

 ≪紅白≫ 坂本冬美/能登はいらんかいね (第41回NHK紅白歌合戦)
      森進一/おふくろさん

平成3(1991)年

 19歳年下の一般女性と結婚、1子をもうける。

1月  待ちわびて哀愁/ラスト・ヒロイン 歌手/マルシア
4月  火の国の女/男の艶歌 歌手/坂本冬美
9月  ラーメンブルース/デュオ 年上の女 歌手/青江三奈&清水アキラ
10月  港唄/みおつくし 歌手/石川さゆり

 ≪紅白≫ 坂本冬美/火の国の女
      石川さゆり/港唄 (第42回NHK紅白歌合戦)

平成4(1992)年

4月  男惚れ/ひとり寝女の泣き枕 歌手/坂本冬美
9月  あきらめてバイバイ/あなたに帰りたい 歌手/マルシア

 ≪受賞≫ 第8回1991年度/藤田まさと賞  火の国の女
 ≪紅白≫ 坂本冬美/男惚れ (第43回NHK紅白歌合戦)

平成5(1993)年

2月  おもいで酒場/冬物語 歌手/宇多川都
3月  /<命かざって> 歌手/真木ことみ
4月  恋ざんげ/はまなす恋唄 歌手/伍代夏子
8月  夢をかざって/おもいで夜景 歌手/森進一

 6月10日
 肺がんのため死去。
 満55歳、まだ早すぎる生涯を終えた。

 年末の第44回NHK紅白歌合戦では、
猪俣公章の墓     森進一が 「さらば友よ
    都はるみが「おんなの海峡
を熱唱し、輝かしい功績を残し急逝した恩人を偲んだ。

 今は故郷に戻り、法界寺で両親とともに眠っている。

 その後も、新たなアルバムが毎年 発売され続けており、NHK紅白歌合戦でも歌い継がれている。
    平成 6(1994)年/第45回 おふくろさん 森進一
    平成 7(1995)年/第46回あばれ太鼓坂本冬美
    平成 9(1997)年/第48回千曲川五木ひろし
    平成10(1998)年/第49回冬の旅森進一
    平成11(1999)年/第50回おふくろさん森進一
    平成13(2001)年/第52回それは恋森進一
    平成15(2003)年/第54回あばれ太鼓坂本冬美
    平成17(2005)年/第56回おふくろさん森進一
    平成18(2006)年/第57回おふくろさん森進一
祝い酒坂本冬美
    平成20(2008)年/第59回おふくろさん森進一
    平成23(2011)年/第62回港町ブルース森進一
    平成27(2015)年/第66回祝い酒坂本冬美
千曲川五木ひろし
おふくろさん森進一
    令和元(2019)年/第70回祝い酒 (祝!令和バージョン)  坂本冬美
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